CAN MALAYSIA ELIMINATE FORCED LABOUR BY 2030?

https://www.iseas.edu.sg/wp-content/uploads/2022/11/TRS2_23.pdf

◼️概要(報告書の冒頭に記載の概要の和訳):

  • 強制労働は、様々な強制行為や権利侵害を含み、マレーシアにおいて根深い問題である。近年では、この問題を解決し、マレーシアの評判を回復するために、より断固とした協調的な取り組みがなされてきたが、COVID-19の影響下で強制労働の問題は深刻化し、2020年から2021年にかけての暴露報道や貿易禁輸措置が行われた。
  • 最も重大な結果として、米国は大手ゴム手袋製造業者およびパーム油生産者に対して「違反商品保留命令(WRO)」を課した。2021年および2022年の2年連続で、マレーシアは米国の年次「人身取引報告書」において最低評価である「ティア3」に分類された。2021年11月には、ILO参加のもと、マレーシアが三者協議を通じて策定した「強制労働に関する国家行動計画(NAPFL: National Action Plan On Forced Labour) 」が発表され、あわせて「人身取引に関する国家行動計画第3版(NAPTIP 3.0: the third National Action Plan on Trafficking in Persons)」も同時に運用が開始された。
  • NAPFLは、最終的に2030年までに強制労働を撤廃することを目指し、そのための戦略と統合的な施策を定めている。この目標の達成には、根本的な問題の深刻度に見合ったシステミックな解決策が求められる。労働のアウトソーシングが公式に終了し、外国人労働者の流れをより適切に管理するための政府間の二国間イニシアティブが増加したにもかかわらず、強制労働は依然として存在している。
  • 労働供給業界および行政制度における継続的な課題、特に内務省と人的資源省の権限の重複といった問題が、より公正で効果的かつ説明責任のある移住労働者制度の構築と実施を複雑にしている。
  • 二国間の覚書を通じた政府間協定は確立された枠組みとなっているが、一貫性の欠如と透明性の不足によって問題が残されている。
  • マレーシアの新政権は、2030年までに強制労働を撤廃するという目標を実現するために、国内および労働者送出国における既得権益に立ち向かい、根深い問題に取り組まなければならない。

◼️要約

  • 米国は大手ゴム手袋製造業者およびパーム油生産者に対して「違反商品保留命令(WRO)」を課した。2021年および2022年の2年連続で、マレーシアは米国の年次「人身取引報告書」において最低評価である「ティア3」に分類された。
  • 2021年6月、マレーシア「人身取引に関する国家行動計画第3版(NAPTIP 3.0: the third National Action Plan on Trafficking in Persons)」として、5年間の新たな計画を更新した。
  • 2021年11月26日には、「強制労働に関する国家行動計画(NAPFL: National Action Plan On Forced Labour)」が発表され、2030年までに強制労働を根絶するという目標が掲げられた。この目標は、公正と基本的権利を中心に据えたものであり、マレーシアが表明する「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」基準の遵守、および労働集約的かつ低賃金の生産への依存を減らし、高付加価値で高賃金の雇用を促進するというより広範な志向に合致するものである。
  • ILO「強制労働条約」(1930年、第29号)では、強制労働とは「処罰の脅威の下に強要され、かつ自ら任意に申し出たものではない一切の労務」と定義されている。ILOはこれをさらに発展させ、「強制労働とは、暴力や脅迫の使用、あるいはより巧妙な手段(蓄積された負債、身分証明書の押収、移民当局への通報の脅しなど)を通じて、人々が強制的に働かされる状況を指す」としている。監視および執行の目的のために、強制労働は次の11の指標で構成されている。①脆弱性の悪用、②詐欺、③移動の制限、④孤立、⑤ 身体的・性的暴力、⑥脅迫・威嚇、⑦身分証明書の保持、⑧ 賃金の留保、⑨ 借金による束縛、⑩ 虐待的な労働・生活環境、⑪ 過度な時間外労働(強制労働撲滅特別行動計画(SAP-FL))。
  • マレーシア憲法(1957年)、マレーシア連邦憲法は、奴隷制度および「すべての形態の強制労働」を禁止している。ILO強制労働条約(第29号)にも加入している。

マレーシアの移住労働者

  •  「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」の移住労働者の定義:「国籍を有しない国で、有給の活動に従事する予定であるか、またはこれに従事している者」
  • 有効な就労許可証を所持している者でも、強制労働の被害者となる可能性がある。とはいえ、非正規移住労働者の存在は、強制労働撲滅に向けた取り組みの大きな障害となっている。
  • ○労働許可の数、△就業中の移住労働者数(推定、非正規労働者を含む)
  • 過去15年間における変動は、構造的要因および政策的対応に起因する。労働許可証の数は2000年から2008年にかけて増加し、金融危機から2012年まで減少したが、その間に非正規移住労働者が明らかに増加した。2013年に急増したのは、大規模な取締りおよび登録の取り組みの結果である。その後、2016年から2019年には、労働許可証の数が一時的に減少し、その後回復した。移住労働者数が200万〜220万人で安定していた時期でもある。2020年の急激な減少は、解雇された労働者や労働許可の更新が行われなかった者が一斉に母国へ帰還したこと、および新たな移住労働者の入国が停止されたためである。COVID-19後の状況は、外国人労働への依存を減らし、労働者管理制度を強化し、強制労働を是正するというリセットを行うチャンスとなっている。
  • 2015年の経済センサスによると、就業者に占める移民労働者(正規・非正規を問わない)の割合が最も高いのは農業(56%)であり、これに建設業(36%)、製造業(26%)、サービス業(3%)が続く。その他の情報源では、建設業および農業における移住労働者への高い依存度が強調されており、とりわけプランテーション分野においてその傾向が顕著である。2013年にマレーシア雇用者連盟(MEF)が実施した調査でも、正規・非正規の移住労働者の両方を含めて、建設業およびプランテーション分野における移民労働者の割合は70%に達するとされている。また、マレーシア・パーム油委員会(MPOB)のデータも、同セクターの外国人労働者の割合が70%であり、現場作業員の85%以上が移住労働者であると示している(2015)。
  • プランテーション労働は極めて労働集約的であり、仕事の92パーセントは、手作業および半熟練の仕事(果房の収穫、作物の製油所への運搬、木への施肥、除草、害虫・病害管理、圃場管理など)に分類される。
  • マレーシアの移住労働者の最大の送出国はインドネシアである。しかし、インドネシアの送出数は大きく低下しており、労働許可全体に占める割合は2000年の75%から2019年には35%にまで落ちた。一方で、特にバングラデシュとネパールがその存在感を高めてきた。
  • 近年では、いくつかの国がマレーシアへの労働者の派遣を停止したり、ネパールおよびインドネシアとの間で二国間覚書(家庭内労働者向け)が締結されたりしており、バングラデシュとの交渉も進行中である。労働供給産業における人材紹介業者や商業団体の既得権益は、受入国および送出国の双方に存在し、両国の国民による合弁事業の形を取ることもある。強制労働対策は、二国間協定の設計、調和、執行に大きくかかっている。

マレーシアの制度と実践

  • 強制労働を根絶する国の能力は、法律や政策、統治と実施にかかっている。度重なる告発による評判の損失、貿易関連の禁止措置や警告による財政的損失は、近年、政策立案を促進する原動力となっている。
  • 1991年に「Policy on the Recruitment of Foreign Workers(外国人労働者の雇用政策)」が公布され、同時にレビー制度(外国人労働者の雇用税)が導入された。同時に導入された一時就労許可制度は、マレーシアが外国人労働者の流入を規制しようとする取り組みであった。正規労働者には公式に法的保護が付与されるため、非正規労働者に比べて強制労働のリスクが一般的に低い。産業分野や技能レベルによるレビー率の違いは、雇用創出における政策の優先順位を示す。レビーは非マレーシア人にのみ適用されるため、マレーシア人を雇用しないことへの罰則ともなる。
  • しかし、レビー制度は管理が不十分である。また、たとえ就労許可証保持者であっても、マレーシア人労働者に比べて著しく保護が少ない。特に、雇用主や仲介業者が労働者のパスポートを保持することや、労働者が労働組合に加入することを妨げることなどが顕著である。労働者保護の弱さ、組織化の制限、民間部門が「High Road」(労働者を大切にし、生産性を向上すること)を回避しようとする全般的な傾向は、1990年代以降の大規模な外国人労働者の受け入れと、利益性の高い労働供給産業の定着によって、さらに悪化している。2019年までは、外国人労働者への職場保険の提供はごく限られていた。労働者が職を失った場合に許可証が取り消される制度、および許可証の毎年更新の要件は、雇用主に過度な支配力を持たせる状態を継続させている。
  • 外国人労働者の雇用主変更手続きは、企業の閉鎖、再編、または雇用主の死亡に関連する6つの条件のみを許可要件として規定している。強制労働、搾取、虐待は条件に含まれていない。外国人労働者が辞職する場合、原則として母国に帰国し、採用プロセスを一からやり直すことが求められる。これは煩雑であり、また高額な採用手数料がかかるため、多くの労働者は強制労働状態であってもその雇用主の下にとどまるか、あるいは逃亡してマレーシア国内で非正規労働者になることを選択する。逃亡した場合、移民局によって許可証を取り消される。その結果、1959年移民法に基づき、適切なビザまたは書類を所持していない罪に問われる可能性がある。
  • 高額な費用と債務、雇用主の変更の禁止は、労働者が非正規状態になる一因となっている。このような問題は、マレー半島においてより一般的である。さらに、雇用主が高額な採用手数料を支払っていることから、労働者からより多くの労働を引き出そうとしたり、労働者を契約から解放することに消極的になる傾向が強まる恐れがある。出入りの容易な国境に接するサバ州およびサラワク州においては、特にプランテーションにおいて入国時点から非正規状態の労働者の割合が高い。
  • 長年にわたり、さまざまな報告書が外国人労働者の虐待および脆弱性を強調してきた。国際的な圧力の下、マレーシアでは2007年に「人身取引及び移民の不法入国防止法(ATIPSOM)」が制定され、2010年には「National Action Plan on Anti-Trafficking in Persons and Anti-Smuggling of Migrants(人身取引及び移民の不法入国防止に関する国家行動計画)」が開始された。
  • サプライチェーンの監視、国際的枠組み、二国間の関与(特に米国)が、労働改革を実施する圧力・誘因となってきた。米国務省による年次の「人身取引に関する報告書」は、国々を4段階にランク付けしている。2010年以降、マレーシアは大半の年で「ティア2監視対象リスト」に分類されてきたが、2014年および2021~2022年には最低ランクの「ティア3」に格下げされた。2015年から2016年にかけて米国は、太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉の一環として、マレーシアを含むいくつかの国と、労働法・制度をILO基準に整合させることを目的とした「Labour Consistency Chapter (LCC)」に関する協議を開始した。
  • マレーシアは、米国労働省の資金提供により2015年9月に開始されたILOのGlobal Bridge Projectにも参加していて、TPP(後には「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」)の条件の一環として、ILO「1930年の強制労働条約の2014年の議定書(Protocol of 2014 to the Forced Labour Convention, 1930)」 の批准義務を負っている。外部からの監視もまた、マレーシアに圧力をかけてきた。ILO強制労働条約(第29号)に関する「条約勧告適用専門家委員会(CEACR) 」による2018年のマレーシアの条約実施に関する報告書では、移住労働者の強制労働に対する脆弱性が指摘された。市民社会組織は、人身取引および強制労働の問題を是正するために、精力的にキャンペーンを展開してきた。このような状況の中で、マレーシアはより包括的な対応策を策定するに至っている。
  • 2018年10月、希望連盟(PH)政権は、マレーシアにおける移住労働者のリクルートメント(訳註:募集・雇用)に関する徹底的な調査を行うため、「外国人労働者管理に関する独立委員会」(ICFWM)を設置した。報告書と調査結果は2019年にマレーシア内閣に提出されたが、現在に至るまで非公開であり、2022年2月にはマレーシア人権委員会(SUHAKAM) が政府に公開を促す事態となった。
  • 2019年、マレーシア政府は、三者間協議のパートナーであるマレーシア雇用者連盟(MEF) およびマレーシア労働組合会議(MTUC) と共に、ILOと「ディーセント・ワーク・カントリー・プログラム(DWCP)2019–2025」に関する覚書(MoU)を締結した。このDWCPは、持続可能な開発目標8と整合している。
  • 2019年には、住居および設備、労働関連保険を規定する法律が改正され、移住労働者の保護を強化する明確な規定が設けられた。1990年のEmployees’ Minimum Standards of Housing, Accommodations and Amenities Act (従業員最低住宅・設備基準法)(以前の名称はWorkers’ Minimum Standards of Housing and Amenities Act)は、健康・衛生に関する要件(病気の従業員を病院へ搬送することを含む)を維持しつつ、従業員に提供する住居が「Certificate for Accommodation(居住施設認証書)」を取得しなければならないという要件を追加で導入した。この改正により、雇用者が提供する住居に対する基準と設備の規制の範囲が拡大され、また家賃として控除可能な賃金の上限が引き上げられた。また、1969年従業員社会保障法 (Employees’ Social Security Act:SOCSO)の改正により、職場や業務に関連した移動中の傷害に対するSOCSOの労災保険の適用範囲が非マレーシア国籍者にも拡張された。2020年3月までに、142万人の移住労働者がSOCSOに登録された。
  • 強制労働は、立法上の欠陥というよりも、運用および行政上の問題に起因すると考えられる。
  • 第一に、マレーシアは労働供給および関連サービスから成る収益性の高い産業が定着することを許容してきた。この産業は、労働者の輸入から最大限の利益を得ようとする既得権益を有し、また労働者が高額な手数料・負債を負う要因となっており、結果として強制労働に対する脆弱性を悪化させている。
    • 労働のアウトソーシング、すなわち労働者と雇用者との関係に第三者が介在する形態は、実質的に労働者を雇用する産業へと拡大した。結果、雇用責任の所在を曖昧にし、労働力を商品化するに至った。このような雇用構造は、雇用者と被雇用者の責任関係を無効化するものであり、労働虐待および法令不遵守の大きな要因として広く認識されている。このような事業に対するライセンスは2019年に正式に廃止され、以後、労働者は直接雇用されねばならず、労働力供給業者が仲介者として介入することは許されない。この変更は、労働者の不安定な立場を軽減し、雇用者と被雇用者との関係性を明確にするものである。しかし非正規の雇用形態は依然として存在し、雇用者の責任を曖昧にし続けている。アウトソーシング企業は「管理会社」として再編され、許可が雇用主の名義で発行されているにもかかわらず、実際には労働者の管理を担っていることが報告されている。間接雇用は、警備員や清掃員といった勤務地が流動的なセクターに依然として広く見られる。
    • マレーシアへの移住にかかるコスト(主にリクルーターへの手数料)の高さは、労働者の負債や、搾取に対する脆弱性の一因となっている。民営化された各種サービスが急増し、手数料の高騰や労働者の大量流入を助長している。2017年には、過度に高額な手数料および債務の罠のリスクを理由に、ネパールがマレーシアへの労働者派遣を一時停止した。調査の結果、実質的に不要なサービスが政治的に結びついた組織に民営化されていた実態が明らかになった。2018年10月、両国がこれらの問題に対する保護措置を盛り込んだ覚書(MoU)を締結し、移住は16か月後に再開された。
  • 第二に、政策の一貫性の欠如、透明性の不足、執行力の弱さが、移民の流入や労働基準の規制における政府の実効性を著しく損なってきた。
    • 移民労働者に対するレビーの実施は、マレーシアの政策形成がいかに受動的で、一貫性と持続性を欠いているかを示す事例である。レビーの支払いは正式には雇用者の責任とされているが、実際には労働者の給与から控除されることが常態化している。長年の苦情を受けて、政府は2009年に雇用者が支払うよう義務づけると発表したが、2013年には最低賃金の順守を円滑にする移行措置としてこの決定を撤回した。2018年になると、雇用者に対し、レビーを自ら支払うこと、および労働者のパスポートの保持をしないことなどを約束する署名を求めるようになった。
    • 強制労働の問題解決を目的として様々な法令や規則が提案されてきたものの、関係する執行機関は依然として縦割りであり、運用の統合がなされていない。2007年に設立された「MAPO: Council for Anti-Trafficking in Persons and Anti-Smuggling of Migrants(人身取引および移住者密輸対策評議会)」の下に設置された合同タスクフォースも、省庁間の連携において大きな進展を見せておらず、特に人身取引に関する有罪判決の進展が遅い。
  • 第三に、政府機関間の権限の重複、さらには省庁の役割配置の不適切さが、移民労働者の管理を損なってきた。
    • 労働問題に関する責任、権限、専門知識は人的資源省(MOHR)に属しているものの、移民労働者の受け入れに関する最終的な意思決定は、内務省(MOHA)と分担されている。インドネシアの駐マレーシア大使であるヘルモノ氏は、「各省庁や機関の間で異なる勢力や代理人が各自の利益を最大化しようとする官僚間の政治」が、マレーシアの移民労働問題の根本原因であると指摘している。人的資源省は雇用者による外国人労働者の割当枠申請を監督するが、つい最近まで、最終的な割当や送出国の選出に関する決定権は内務省が有していた。内務省は、労働アウトソーシングの拡大や入国管理の民営化を主導したとされ、営利目的で労働者を供給する産業の拡大や、一連の不正や虐待の温床となってきた。
    • 意思決定権限を内務省から人的資源省へ移管することは、長年にわたり提唱され、一定の進展も見られた。とはいえ、省庁間の権限や意思決定権の整合性の確保、及び省庁間の対立の緩和には、依然として多くの改善の余地があり、不安定かつ流動的な状況が続いている。なお、強制労働の問題は、複数の省庁にまたがる構造的・制度的な課題が根底にあるため、行政上の改革だけでは不十分である。
  • 第四に、汚職および法執行の弱さは、マレーシアの一般的な問題であり、特に移住労働分野においては、汚職が入り込む余地が広く、また起訴手続きが遅滞しているため、その深刻さが際立っている。
    • 政府関係者、移住者密輸業者、人身取引組織が関与する事件が、時折報道されている。実際、人身取引事件に関する訴追および有罪判決の実績が乏しいことが、米国務省の人身取引報告書においてマレーシアの格付けが低い主な原因となっている。さらに、労働法違反に対して雇用主に科される罰則も不十分である。マレーシア国内で司法にアクセスすることの困難さから、一部の強制労働被害者は、消費財企業や買い手が所在する国においてサプライチェーンに対する民事訴訟を起こしている。
  • 第五に、マレーシアにおける移住労働問題は、三者間エンゲージメント(訳註:政府・労使間の対話)や市民社会の民主的参加が不十分なまま政策形成が行われてきた。
    • 政府は、労働者側の声を繰り返し軽視してきた。実際、マレーシア政府はこれまで、移住労働者の権利擁護者に対して厳しい処遇(起訴や国外退去処分など)を加えてきた。ILOが2019年に実施した分析では、マレーシアがILO強制労働議定書の批准に向けて対処すべき問題として、雇用者団体、労働組合、市民社会団体と連携する「労働コンプライアンス戦略」の欠如が挙げられている。
    • 雇用主側も、強制労働問題への対応の重要性についての理解は進んできているが、広く実践されているとは言い難い。それでも、政府・雇用者・労働組合による三者構成で締結された「ディーセント・ワークに関する覚書(MoU)」や、NAPFLの策定など、いくつかの前向きな変化も見られる。

告発と対応:

  • 2018年以降、マレーシアはかつてないほど厳しい監視の目にさらされるようになり、企業単位での制裁や国家としての否定的評価を幾度となく受けてきた。これに対するマレーシア側の反応も、以前のような反射的な否定姿勢から、問題に対処しようとするより慎重な立場へと変化している。とりわけ注目を集めているのが、ゴム手袋産業とパーム油産業である。
  • 表2では、2019年9月以降に米国税関・国境警備局(CBP)が発出した「違反商品保留命令(WRO)」や、他国政府による対応措置がまとめられている。これらの制裁措置は、いずれも強制労働の疑いに基づくものであり、COVID-19による健康危機と経済危機が重なった時期に急増した。一部では、企業の操業停止や、特にゴム手袋分野での需要急増などが、状況をさらに悪化させた要因として指摘されている。
  • 2018年以降、マレーシアでは、移住労働者に関する立法および政策策定が活発になっている。2021年発表の「強制労働に関する国家行動計画(NAPFL)」は、ILOの関与と指導の下で三者構成(政府、雇用者、労働者)による協議を経て作成されたものである。
    • NAPFLは、国際的に確立された「4P戦略」(予防、保護、訴追、連携)に基づいており、4つの戦略的目標(①知識基盤、認識および理解の向上、②法令遵守とその執行の強化、③移住管理の改善(リクルートメントを含む)、④強制労働被害者への救済・支援・保護)が掲げられている。
    • NAPFL策定プロセスで委託された分析では、構造的課題として、労働許可証の更新過程における権力の非対称性、労働者の団体的代表権や苦情申立て制度の欠如により、労働者が脆弱な立場に置かれていること、非正規の労働者の蔓延が挙げられた。また、労働監督機構の不備や、「zero-fee recruitment(費用ゼロのリクルートメント)」の達成が重要であることも強調された。

強制労働を終わらせるための鍵

  • 2022年3月、「Ops Banteras(根絶作戦)」という一連の職場強制捜査が開始された。これは、強制労働および人身取引を根絶することを表向きの目的としている。この措置は、過去に非正規移民労働者に対する取り締まりとして宣言された類似の取り組みに続くものである。過去に制度的な根本原因に対処することに失敗した懲罰的手法の再導入は、マレーシアが本当に強制労働を根絶するために十分な資源と政治的意思を結集しているのかという懸念を生じさせる。さらに、現在進行中の汚職調査は、不正と利得追求が深く根付いていて、改革を損なう可能性があることを示している。
  • 立法上の進展は評価に値するが、そのギャップや不十分さについても精査が必要である。マレーシアは2021年12月に、ATIPSOM(人身取引および移住者密輸対策法)を改正して、法律の適用範囲を拡大し、罰則を強化した。2022年3月には、ILO強制労働議定書を批准し、また、1955年雇用法の一連の改正案(強制労働の定義や、規制的・懲罰的措置の導入を含む)を可決した。これらは前向きな一歩であるが、法案の強制労働の定義が狭い。
  • NAPFLは、原則として同意し得る詳細な計画である。
  • 1:移住労働者のリクルートメントおよび雇用制度のリセット
    • マレーシアは、移住労働においてリクルートメントおよび雇用プロセスが重要であること、そして強制労働慣行を排除するためには制度改革が必要であることを認識している。高額な費用と重い債務が、移住労働者を始めから搾取されやすい状況に置いている。雇用主にすべての手数料を支払わせる義務を執行し、労働者への手数料請求をゼロにするためには、全体のリクルートメント費用を最小限に抑えることが重要である。
    • 雇用の面では、労働者を保護するために多くの変更および改善が必要である。アウトソーシングの廃止と直接雇用の徹底が求められる。抜け穴は封じる必要がある。また、非正規労働者の蓄積とその後の一斉取り締まりおよび大量拘束というサイクルを断ち切る必要がある。
    • 雇用主の変更の事実上の禁止および移民関連サービスの広範な民営化は、移住労働者の脆弱性と、労働供給業界の既得権益に影響を及ぼしている。雇用主が高額な手数料を負担している場合、労働者を解放することを望まない、あるいは最初から手数料支払いを回避するためにアウトソーシングされた労働力の使用を好む傾向がある。危機の時期や非正規移住労働者の数が溢れた時に、特別プログラムを通じて労働者を再雇用するという事例が繰り返されている現状を鑑みれば、再雇用という慣行を制度化し、一般的な職場流動性を高める方が、より合理的かつ有益である。民営化されたサービスに関しては、どの業務が正当化され得るのかなど、徹底的な再検討が求められる。さまざまな民営化およびアウトソーシングされたサービスは、公的機能の重複であり、付加価値を持たず、汚職の疑いが続いた。強制労働撲滅への取り組みは、労働移住制度の浄化と連動する。
    • 国境を越えた解決策が必要である。政府間覚書(MoU)は、主として順守のための枠組みであり、法的拘束力を持たないが、労働移住を管理する重要な仕組みとして確立されてきた。その限界を認識したうえで、MoUの適用範囲を拡大し、国内法に準拠させること、および一貫性および透明性を確保することが必要である。これは、特にマレーシアが、労働供給国とのさまざまな協定を抱えているため重要である。移住費は、マレーシア到着後に賃金から差し引かれることが多いが、その多くは労働者の出身国における非公式な借金による。手数料ゼロを実現するには、送出国の協力が不可欠である。
    • 政府間覚書(MoU)間の不一致は、一貫性の欠如の問題をもたらし、マレーシアの評判を損なう結果となっている。2018年にネパールと締結されたMoUは、その好例である。このMoUは、マレーシア政府がネパール人労働者を「あらゆる形態の嫌がらせ、虐待および強制労働」から保護すること、さらに苦情を申し立てたネパール人労働者が労働紛争の解決までマレーシアに滞在できるように特別許可証を発行することを規定している。また、事業の閉鎖や労働者の搾取・虐待があった場合には、雇用主の変更を許可することも明記されている。このような前例は、すべてのMoUに適用されるべきである。一般的にMoUの策定プロセスは非公開であるため、市民社会による関与が妨げられている。
  • 2:「High Road(訳註:高付加価値・高賃金)」戦略への決定的な転換
    • 強制労働の問題は、マレーシアが低賃金・労働集約型の生産から脱却できずに、ディーセント・ワーク基準とも整合する、高度技能・高賃金かつより資本集約的な形態へと移行できていないことと密接に絡み合っている。労働者移住制度のハイロード戦略への転換は、強制労働の根絶と整合する。雇用主の意識もまた、「ローロード」(訳註:低付加価値・低賃金)アプローチの継続に一役買っている。移住労働者が生産コストおよび一時的な投入資源と見なされる限り、労働者の発展と福祉への投資不足は続くだろう。これは就労許可の10年制限(+3年延長可)によっても助長されている。
    • マレーシア経済はこれまで、労働力の搾取、劣悪な労働・生活環境の提供、労働者の移動の制御という「ローロード」戦略を通じて繁栄を遂げてきた。法的・政策的進展はあるが、保護は依然として欠けている。たとえば、2021年の雇用法改正では、人身取引や強制労働の罪を犯した雇用主に対して移住労働者の雇用を禁止する条項が盛り込まれたが、強制労働の定義は明らかに狭い。他の事例として、労災補償が移住労働者にも提供されるようになったが、invalidity(障害年金)制度には依然としてアクセスできない。また、マレーシア国民には加入が義務付けられている従業員積立基金(EPF)への加入が、移住労働者の場合には雇用主の裁量に委ねられている。このようなコスト削減は、低コスト戦略の維持につながり、移住労働力の総量削減および技能水準向上という国家目標に反する。
    • 低技能労働者の大量採用を抑制するため、レビーの強化を継続すべきである。
    • 他の政策的決定もまた、移住労働者の従属的な地位に寄与し、差別的な態度や制度的排除を助長している。たとえば、医療アクセスにおいても、マレーシア国籍者と非国籍者の間には明確な格差が存在する。2016年1月、政府は移住労働者に対する医療補助金を全面的に撤廃した。
    • NAPFLと並行して、マレーシアはNational Action Plan on Business and Human Rights(NAPBHR、ビジネスと人権に関する国家行動計画)およびNational Action Plan on Elimination of Child Labour (NAPCL、児童労働撤廃国家行動計画)の策定にも取り組んでいる。その進展を加速するには、より強い政治的意志が必要である。  NAPBHR は、「ビジネスと人権に関する国連指導原則(UNGPs)」に基づき、すべての国連加盟国に対して国連「ビジネスと人権に関する作業部会」から提案されているものである。また、2018年12月に国連総会で採択された「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」の国家実施計画には、「国際移住レビュー・フォーラム(IMRF)」と呼ばれる報告プラットフォームが含まれており、各国には具体的な行動を誓約することが強く推奨されている。このイニシアティブは、国家レベルのGCM実施計画を欠いているマレーシアにとって、極めて重要かつ関連性の高いものである。
  • 3:国内・国際的な文脈における効果的かつ透明な実施
    • 政策の誠実で有効性な実施は、マレーシアの労働移住制度において特に強調されるべきものである。国内、二国間、監視機関という三つの文脈で論じる。
      • 国内:
        • 人的資源省(MOHR)と内務省(MOHA)間の権限の重複と領域争いが、高コスト・高債務の制度を温存させ、それが非正規労働および強制労働の状態を定着させてきた。ディーセント・ワークと強制労働撲滅への取り組みは、多くの場合、人的資源省によって表明されているが、特に内務省と協調した省庁間の取り組みが必要である。両省の競合が、不必要な官僚的障害と冗長性を生み出し、移住労働者のリクルートメントおよび管理に関する改革を遅らせている。両省の標準作業手順(SOP)が非公開である中、移住労働者の割当数における不正は、マレーシア国会の公会計委員会(Public Accounts Committee) の調査によって明るみに出た。人的資源省から内務省への権限の移譲は、勢い付いていたが、最近は後退している。しかし、移譲は完了されなければならない。出入国管理の問題は当然ながら内務省の所管のままであるが、人身売買や虐待の被害に遭った移住労働者の扱いについては、人道的配慮に基づいて指揮されるべきである。現在、人的資源省による調査や各種機関による取締りの中で発見された人身売買や非正規労働者の事案は、ほぼ即座に出入国管理局に伝えられ、安全保障の問題として扱われており、人権に配慮した対応がなされていないのが現状である。強制労働の被害者にケアを提供し、加害者に対する訴えを提起できるようにするための役割やリソースを拡大する必要がある。強固な公的弁護人制度も必要である。人的資源省内においても、運用・政策が大きな課題である。執行機関(特に労働監督部門)の人的資源不足の問題に対処しなければならない。労働監督官の人数だけでなく、能力や積極性も重要である。マレーシアにおける労働法違反、特に人身取引に関する起訴の欠如は、大きな問題である。わずかな進展の兆しとしては、MAPO報告書(2020/21年)では、事件数1,789件、起訴数209件、有罪判決48件だったが、2022年報告書では起訴数157件、有罪判決数113件となっている。依然として水準は低いものの、一定の改善が見られる。しかし、米国務省の人身取引報告書(2022年)では、マレーシアが最低ランクの「ティア3」に据え置かれた理由として、執行人員の不十分さが挙げられている。マレーシア政府の報告によれば、人身取引に特化した労働監督官は全国でわずか44名であり、前年の94名から大幅に減少している。さらに、約18,000人の労働者に関連する労働紛争において、労働法違反により雇用者に課された罰金総額はたったRM150万にとどまる。遵守監視の強化と違反者への処罰に関して、大きな改善の余地がある。システミックな汚職は重大な国内問題であり、国際的にも注目されている。汚職は、強制労働と人権監視(2020年の米国務省の「人権報告書」など)において取り上げられている。
        送出国とのエンゲージメント
        • マレーシアは一貫性と信頼性をもって送出国とのエンゲージメントに取り組む必要がある。2012年頃から、G2G(政府間)方式への傾斜が見られるようになったが、これは仲介業者を排除し、コストを削減すること、そして労働移住における公正性と適正さを促進する二国間協定の責任を強化することを前提としていた。しかし、その代表例の一つであるバングラデシュとの協定では、欠陥と乱用が露呈している。G2G方式が低調であったのは、人材紹介業者とブローカーの共謀が原因であると報じられている。「G2Gプラス」リクルートメント制度が2016年に登場したが、公民の両方がリクルートメント関連の手数料から利益を得ていたとして物議を醸した。ある報告書では、バングラデシュ人労働者が支払った法外な採用手数料と、その金額がいかに複数の関係者間で分配されたかが暴露された。最近では、マレーシア人的資源省が、2021年12月にバングラデシュとの間で締結した覚書(MoU、2026年12月に失効予定)が物議を醸している。このMoUは、労働者の募集実施を許可された事業者の数を制限していて、両国で広く批判されている。このような業者数を制限する措置は、健全な競争を妨げ、これにより倫理的な仲介業者がプロセスから排除される恐れがある。この一連の論争は、このMOUの誠実性および労働力の流れを管理し労働者の福祉を保護する能力に対する信頼を損なっている。
      • 監視機関
        • マレーシアは外部の監視機関と一貫性のある建設的な方法で対話(エンゲージメント)を行う必要がある。外部からの監視は、マレーシアに変革への推進力を与えてきた。監視は今後も続くであろう。米政府のWROおよび人身取引報告書は、マレーシアに対応を促した。また、TPPによって始まった、強制労働からの保護の制度化義務は、ILO強制労働議定書の批准などを後押した。2021年7月、欧州連合(EU)は、EU企業が事業活動とサプライチェーンの管理において強制労働に関与するリスクに対処するためのデューデリジェンス・ガイダンス文書を発表した。法的拘束力はないものの、サプライチェーンが実務的に採用すべき包括的な枠組みを提示している。マレーシアは、こうした監査プロセスの正確性と、単純化され教条的であることに懸念を示している。マレーシアは、共通の理解の確立に向けて、米CBPおよびEUとの対話を今後も継続すべきである。また、カナダ、ノルウェー、ニュージーランドなどの政府や企業がマレーシア企業に対して措置を講じているという事実は、場当たり的でなく体系的な対応が重要であることを示している。マレーシアの労働移住に関わる利害関係者は、内部告発者用チャネルの導入に、より建設的に関与すべきである。さまざまなサプライチェーン向けの独立した苦情申し立てメカニズムを提供するために、さまざまなサービスプロバイダがデジタル・ソリューションを開発している。これは、移住労働者が報告を記録し、効果的な解決を求めるための安全な空間を確保することを目的としている。アプリやウェブポータルを開発してきた組織には、Elevate、Ethical Trade Initiative、Issara Institute、Responsible Business Alliance、Migrant Recruitment Advisor-ITUCなどが含まれる。これらのツールは、労働者に力を与え、企業や雇用主の監視を可能にする。しかし、労働関連の苦情は、アプリ「Working for Workers」などを通じて、政府当局に直接報告されることが極めて重要である。このアプリは、2021年5月にマレーシア国籍者および非国籍者の労働者向けに人的資源省が設置したものであるが、有効性については今後の検証が必要である
        • 監査制度は、労働慣行に関する独立評価の主な情報源であるが、限界がある。従来型の社会監査人は、一般的には精緻な監査を行っているが、強制労働の証拠を隠す雇用主や労働仲介業者による欺瞞にさらされる恐れがある。このため、他の利害関係者は、報告書を正しく参照する必要がある。例えば、トップグローブ社は2020年に強制労働の疑いがかけられた際、監査機関AmforiからA評価を得たと主張した。しかしAmforiは声明で反論し、当初の監査報告で示された結論を裏付ける証拠が不足していたことを理由に、トップグローブ社施設の評価をAからDに引き下げた。上場企業が監査報告における強制労働の調査結果を株主に開示するという受託者責任に関しても、手続きおよび義務の明確化が求められる。
  • 4:労働者の声、雇用主による遵守、持続的な三者協働
    • 労働者の利益と権利は、彼ら自身による団体結成とアドボカシーによって保護されるものである。移住労働者は、労働組合への参加に対して構造的な障壁に直面している。雇用主と直接的な雇用関係にない者や、下請け労働者は、事実上、組合の結成や加入から排除されており、直接雇用されている同僚が享受している団体協約の利益からも除外される可能性がある。組合に加入している移住労働者であっても、政府から許可を得なければ、役職に就くことが禁じられている。
    • 民間部門におけるマレーシア人労働者の労働組合加入率は、わずか3%と極めて低いが、非マレーシア国民の場合はさらに深刻である。2018年には、751の労働組合に930,734人の組合員が存在したが、そのうち非マレーシア人は20,080人のみであった。非マレーシア人組合員を有する労働組合は、全体のわずか1.9%にあたる14組合しかなかった。全体として、労働許可証を持つ移住労働者のうち、組合に加入しているのはわずか1.1%に過ぎない。この主な原因は、移住労働者の労働組合加入を妨げる構造的障壁であるが、マレーシアの労働組合側も、移住労働者の包摂に対して冷淡であった。団体協約の利益は、憲法上、組合に加入していない労働者にも及ぶ。2020年7月、マレーシア産業裁判所は、グッドイヤー・マレーシア社の移住労働者の訴えを支持し、「申立人(移住労働者)は同じ権利を有し、差別されるべきではなく、団体協約に含まれる利益を受ける権利がある」と判断した。この判決は、移住労働者が組合員でなかったにもかかわらず、下された。
    • マレーシアの雇用主は、極めて重要な役割を果たす。内部告発が契機となって、マレーシアは対応を講じてきた。従業員最低住宅・設備基準法の改正を促したのは、劣悪な労働者の居住環境に関する報告だった。この改正は、マレーシアの評判を回復する手段として賞賛されていて、2020年9月に施行されるはずだった。しかし、2020年10月31日までに政府に提出された居住施設証明書(Certificate of Accommodation)の申請数は、160万人の労働許可証のわずか9%のみであった。雇用主には法令遵守のための6か月の猶予期間が与えられたが、さらに6か月延長されざるを得なかった。劣悪な居住環境は、今なお繰り返し報告されている。
    • マレーシアが強制労働を根絶する取り組みの効果は、今後10年間の三者協力にもかかっている。NAPFLは、労働者、雇用主、政府による三者協議を経て策定されたものである。加えて市民社会も積極的に関与した。この勢いを保つには、労働移住政策の継続的な強化と統合、そして社会全体が一丸となった実施にかかっている。