FITの問題点

FITについて

FITとは再生可能エネルギーを推進するための制度

現在、わたしたちが使っている電気のほとんどは液化天然ガス(LNG)、石炭、石油などの化石燃料を燃やすことにより生み出されています。化石燃料が気候に大きな影響を与えていることはいまや世界の共通認識となっていますが、このようなエネルギーへの依存を脱却し、より環境負荷の少ない太陽光や風力、バイオマスといった「再生可能エネルギー」を促進するために、経済産業省によりFIT(Feed-in Tariff)と呼ばれる固定価格買取制度が2012年7月に導入されました。

FITについて

今までの流れ

矛盾を抱える再生可能エネルギーの制度

FITは、環境負荷の低い「再生可能エネルギー」を推し進めることを目的に始まった制度です。しかし蓋を開けてみれば、この制度の下で使われている燃料のほとんどは、化石燃料よりも温室効果ガス(GHG)の排出量が多く、生産国でさまざまな問題を抱えているパーム油などの輸入バイオマスが多くを占めています。「環境負荷を削減する」というFIT本来の目的にそぐわない制度として、わたしたちの負担により進められようとしています。

共同提言

バイオマス発電に関する共同提言

経済産業省は2019年4月に「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」を立ち上げ、半年間にわたり有識者との議論を進めてきました。同年7月、プランテーション・ウォッチを含む気候変動や森林問題に取り組む複数のNGOは「バイオマス発電に関する共同提言」を発表しました。温室効果ガス(GHG)の排出量を考慮した制度設計の見直しや、輸入バイオマスの生産地における持続可能性がキーワードとなっています。

ファクトシート

パーム油を使ったバイオマス発電はどのような問題を抱えているのでしょうか?
ここでは重要なポイントについて、以下に具体的な事例を示しながら解説します。

【ファクトシート vol.1】GHGに関して

化石燃料より多くのCO2が出る発電に私たちの賦課金が使われている!

パーム油のライフサイクル(栽培から燃焼されるまで)における温室効果ガス(GHG)の排出量は、化石燃料よりも大きいため環境に良いとは言えません。欧州委員会の委託により行われた調査では、パーム油のバイオ燃料としての消費が引き起こすCO2 排出量は231g CO2-eq/MJと、石炭の排出量(90.6gCO2-eq/MJ)を大きく上回っています。これはパーム油発電の温室効果ガス(GHG)の排出量が、石炭火力発電所の排出量を上回ることを意味しており、パーム油による発電は再生可能エネルギーとして不適切であることを示しています。このため、米国ではパーム油を燃料として利用することを認めておらず、欧州でも利用を制限する動きが強まっています。

【ファクトシート vol.2】労働問題

マレーシアのパーム油産業における労働・人権リスク

パーム油やパーム核殻(PKS)が生産されているアブラヤシ農園では、以前より人権・労働問題の存在が指摘されており、特に日本の輸入量の7割を占めるマレーシアでは、強制労働、児童労働、人身売買など深刻な人権侵害が報告されています。米国労働省により2018年に発表された報告書「児童労働または強制労働によって生産された品目リスト」の中でも、マレーシアでは児童労働や強制労働、インドネシアでは児童労働のリスクを抱える産品としてパーム油が指定されています。

【ファクトシート vol.3】MSPO/ISPO比較

認証パーム油でも拭いきれないリスク

パーム油をバイオマス発電に利用する場合、その持続可能性を担保するためにRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証でトレーサビリティーが確認されている原料のみが認められています。パーム油生産国の政府により導入されたMSPO(マレーシアの持続可能なパーム油)やISPO(持続可能なパーム油のインドネシア国内規定)などその他の認証制度についても、RSPOと同等のパフォーマンスを満たすことができれば認めるとされています。しかし、MSPOやISPOでは基準や制度面において多くの課題があり、現状ではRSPOと同等のものとして見なすことはできません。