MSPO/ISPO比較

MSPO/ISPO比較
認証パーム油でも拭いきれないリスク

パーム油をバイオマス発電に利用する場合、その持続可能性を担保するためにRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証でトレーサビリティーが確認されている原料のみが認められています。パーム油生産国の政府により導入されたMSPO(マレーシアの持続可能なパーム油)やISPO(持続可能なパーム油のインドネシア国内規定)などその他の認証制度についても、RSPOと同等のパフォーマンスを満たすことができれば認めるとされています。しかし、MSPOやISPOでは基準や制度面において多くの課題があり、現状ではRSPOと同等のものとして見なすことはできません。

これまではRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)が、パーム油の持続可能性を確認するための唯一の認証制度でしたが、最近ではMSPO(Malaysian Sustainable Palm Oil)やISPO(Indonesian Sustainable Palm Oil)といった認証制度が台頭しています。これまで持続可能なアブラヤシ農園の経営をするために既存のRSPO認証を取得する事が困難であった小・中規模の事業者への支援を目的として、MSPO認証は2013年、ISPO認証は2011年にそれぞれの政府により導入されました。ボランタリーな取り組みであるRSPO認証とは異なり、小規模農家を含むアブラヤシ農園を運営するすべての事業者に対して取得を義務付けていることが特徴です。

しかし、MSPOやISPOでは基準や制度面において多くの課題があり、現状ではRSPOと同等のものとして見なすことはできません。認証制度には、パーム油の生産過程における持続可能性を確認するために「原則と基準」が設けられていますが、5年に一度の見直しを通じて改善を重ねているRSPOと比較して、MSPOやISPOでは持続可能性を十分に担保することができていません。下の表はRSPOとMSPO・ISPOを比較したものです。

  RSPO(2015) MSPO ISPO
環境 詳細な基準あり 国内法に準拠するとしているが柔軟的で曖昧
HCV HCSAに基づくHCVでの開発禁止 HCVの保護に関する記載なし HCVでの開発禁止とあるが、HCV特定のための手順に関する明確な定義なし
泥炭地 深度に関わらず泥炭地での開発禁止 農地として登録されていれば開発可能 コンセッション地域の70%以上が3m以上の泥炭地である場合は開発不可
新規開発 2007年以降、原生林と保護価値の高い森林では伐採禁止 規制なし
社会 包括的な社会的影響評価を要求 社会的影響評価の実施が要求されているが詳細なし AMDALに依存、運営システムに対する広範囲の要求なし
FPIC FPICに関する詳細なガイドラインあり FPICのプロセスを記録する必要あり 土地収用プロセスにおけるFPICに関する明確な記載なし
労働者の権利 雇用契約、結社の自由を含む詳細な規定あり 国内法に基づく労働者の権利に関する方針の策定を要求 雇用契約に関する要求なし、政府の社会保障プログラムに登録されていればよし
強制労働 強制労働を禁止することを明言 強制労働を禁止する国内法に言及 強制労働に関する記載なし
コンプライアンス すべての基準への遵守を要求、軽微な不適合事項へ対処するための期限付き計画 是正措置を実施するために内部監査の手順および結果を評価 すべての基準への遵守を要求、軽微な不適合事項へ対処するための期限付き計画
苦情処理システム 苦情処理の手順あり、ウェブ上に苦情のステータスを公表   苦情処理の手順あり

Comparison of the ISPO, MSPO and RSPO Standards, efeca (2016)より作成

インドネシアでのISPO認証取得企業による森林破壊の事例

森林減少

赤色は2009〜2016年までに皆伐された天然林を示す。
出典:ENAM TAHUN ISPO, Forest Watch Indonesia (2017)

KLK(Kuala Lumpur Kepong)社の子会社であるJEK(Jabontara Eka Karsa)社がインドネシア東カリマンタン州ブラウに所有するアブラヤシ農園で、フォレスト・ウォッチ・インドネシアが2016年3月に調査を実施ました。その結果、コンセッション面積(14,000ヘクタール)の55%にあたる7,800ヘクタールの森林が農園を拡大するために破壊されていたことが判明しています。また、本来であれば保護されたなければならないオランウータンの生息地となる天然林も伐採していました。ISPO認証の基準(4.6)では生物多様性の保全が規定されており、また法律でもオランウータンなどの保護種やその生息地となる森林に影響を与える活動は禁止されているにも関わらず、JEK社はISPO認証を取得するという矛盾を抱えています。