GHGに関して

GHGに関して

化石燃料より多くのCO2が出る発電に
私たちの賦課金が使われている!

再生可能エネルギーを促進するためのFIT制度は、石油や石炭などの化石燃料や大きなリスクを抱える原子力だけに頼らないエネルギー供給を実現するという意味では画期的な制度です。しかし蓋を開けてみれば、認定を受けた発電事業者のほとんどが、化石燃料より多くの温室効果ガス(GHG)が排出される輸入バイオマスに依存しています。さらに、輸入バイオマスのうち多くを占めている木質ペレット、パーム核殻(PKS)やパーム油は、生産現場において森林減少や人権侵害などさまざまな問題が指摘されており、「環境負荷を削減する」という本来の目的にそぐわないことが懸念されています。このような状況になってしまったのは、制度の設計段階において温室効果ガス(GHG)の排出を考慮していなかったことが背景として挙げられます。

一般的に植物由来のバイオマスは「カーボンニュートラル」と言われており、植物は生育時に二酸化炭素を吸収・固定するので、燃やすことで排出される二酸化炭素を相殺して排出量を0(ゼロ)と考えることができるというものです。しかし、ライフサイクル(栽培から燃焼されるまで)全体での排出量を考えた場合、遠い国から日本まで輸送することで多くの温室効果ガス(GHG)が排出されます。また、これらの作物を栽培する過程で、熱帯林や泥炭地などもともと炭素を吸収・固定している土地を転換して開発する場合、ここから莫大な温室効果ガス(GHG)が排出されることになります。植物由来だからといって必ずしも環境にやさしいとは言えないのです。

パーム油のライフサイクル(栽培から燃焼されるまで)における温室効果ガス(GHG)の排出量は、化石燃料よりも大きいため環境に良いとは言えません。欧州委員会の委託により行われた調査では、パーム油のバイオ燃料としての消費が引き起こすCO2 排出量は231g CO2-eq/MJと、石炭の排出量(90.6gCO2-eq/MJ)を大きく上回っています。これはパーム油発電の温室効果ガス(GHG)の排出量が、石炭火力発電所の排出量を上回ることを意味しており、パーム油による発電は再生可能エネルギーとして不適切であることを示しています。このため、米国ではパーム油を燃料として利用することを認めておらず、欧州でも利用を制限する動きが強まっています。
 

出典:経済産業省

また、上の2つのグラフは、政府と有識者がバイオマスの持続可能性について議論するワーキンググループにおいて経済産業省が提示した資料です。左のグラフはバイオマス燃料と化石燃料のライフサイクル(栽培されてから燃焼に至るまで)の温室効果ガス(GHG)の排出量を比較したものですが、パーム油を含む多くのバイオマス燃料が化石燃料の一つである液化天然ガス(LNG)よりも大きいことがわかります。さらに、この試算では栽培された後に排出される排出量のみをカウントしているため、例えばこれらの作物が熱帯林や泥炭地を転換して開発されている場合には、さらに多くの温室効果ガスが排出されます。それを示したのが右のグラフですが、泥炭地を開発した場合の排出量は、そうでない場合よりも約139倍に膨れ上がるという試算が出ています。このような状況になってしまったのは、制度の設計段階において温室効果ガス(GHG)の排出を考慮していなかったことが背景として挙げられます。