原文:Social Sustainability of Palm Oil Industry: A Review
https://www.frontiersin.org/journals/sustainability/articles/10.3389/frsus.2022.855551/full
◼️要約:
- パーム油産業における持続可能性の中でも、社会的側面は経済的および環境的側面と比較して相対的に軽視されてきた。「社会的持続可能性」は、具体的な影響や実践の伴わない概念であることが多い。
- マレーシア政府は、パーム油産業の持続可能性を積極的に擁護しているが、その取り組みによる影響は限定的であり、特に社会的側面においては顕著な成果が見られていない。その主な要因としては、社会的持続可能性の評価が極めて複雑かつ困難であることが挙げられる。
- 社会的影響の評価、社会指標の選定、および社会的福祉の向上を目指した取り組みの効果測定には、多くの不確実性と複雑さが伴う。現在利用可能な社会的持続可能性の評価および測定ツールの多くは、依然として折衷的かつ柔軟なものである。その理由の一つは、「生活環境、平等、健康、安全」といった社会的指標の測定が、社会集団の文化的価値観や教育水準などに大きく左右されるためである。さらに、社会的影響の評価は、文脈に即した指標に基づいて設計され、解釈され、実際の行動に反映されてはじめて意味を持つものといえる。
- 本研究では、パーム油産業の社会的持続可能性という概念の現状を把握するために、4段階のレビュー(文献調査)を実施した。その中で、「社会ライフサイクル分析(Social Life Cycle Analysis)」および「社会影響評価(Social Impact Assessment)」が、特定の産業やプロジェクトに関連する実際および潜在的な社会的影響を評価するための最も包括的な手法であることが確認された。ただし、こうした社会データの分析・解釈においては、「関連性(relevancy)」の確保が重要であり、特に先進国と開発途上国との違いを適切に考慮する必要がある。