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インドネシアにおける慣習的な土地の権利

インドネシア憲法(第18B条第2項)では、「国は、先住民族とその伝統的権利について、それらが存在し、社会の発展と国の原則に適合する限り、認識し尊重する」としており、基本的な先住民族の権利を保障しています。

しかし、1967年に制定された森林基本法により森林地域(Kawasan Hutan)は国有とされ、先住民族や地域住民の森林の慣習的な土地所有権は排除されています。たとえ法律が制定される前から慣習的に利用されてきた地域であっても、国有林内における所有の権利は政府に認められていません。

このような解釈は憲法に違反するとして、2012年に憲法裁判所が「先住民族の土地は国有林から返還されるべき」との裁定が下されました。また、UNDRIPや人権保障の立場に立つならば、先住民族や地域住民の権利尊重のための対応が必要です。

住民が慣習的に利用してきた地域に開発事業権が発行され、権利を巡る土地紛争に発展している例が数多くあります。現地のNGO Sawit Watchによれば、インドネシア全土でのアブラヤシ農園開発に関する紛争は、約700件近く報告されています。

各社のインドネシアでの土地紛争件数が報告されています。
PTPN 98件、ウィルマー 53件、シナルマス 36件、AAL 36件、Lonsum 34件、サリム 18件、Raja Garuda Mas 16件、Tanjung Lingga 13件、Hartati Murdaya 12件、Makin group 11件、Lyman 11件、Duta Palma 11件、Torganda 10件、カーギル 8件、Sipef 7
件、Golden Hope 7件、Surya Dumai 5件、Kella group 5件、Famili Raya 5件、Bakri group 5件、サイムダービー 4件、Yakin 3件、Musi Mas 3件、Cussons 3件、Banua Indah 3件、コリンド 2件、CDC 2件、UP 1件、Union Sampoema 1件、IIKP 1件、Ghutrie 1件、不明 257件

アブラヤシ農園開発のための法的手続

アブラヤシ農園開発を進めるには、政府から様々な許可を取得する必要があります。まず前提条件として、アブラヤシ農園は環境・林業省の管轄下にある森林地域(Kawasan Hutan)内であってはなりません。森林地域では基本的に林業しか認められていないためです。開発予定地域に森林地域が含まれている場合、森林地域の開放(Pelepasan Kawasan Hutan)や森林地域の交換(Tukar Menukar Kawasan Hutan)などの法制度を利用して土地のステータスを変更することで合法的に開発が可能となります。

 

まず、県知事または市長から用地許可(Izin Lokasi)を取得する必要があります。これは、開発予定地域を確保するためのもので、企業は用地許可の取得後三年以内に地域住民に対する開発計画の説明、土地の取得のための協議、環境影響評価(AMDAL)を完了させる必要があります。協議の結果、地域住民が土地の譲渡や企業からの補償金の受け取りを拒否した場合などは、開発を中止するという選択肢も視野に入れていなければなりません。しかし、実際には企業や政府による開発ありきの一方的な姿勢が、土地収奪にまで発展するという事例も少なくありません。アブラヤシ農園開発を含むプランテーション開発による紛争の84%は、このような強権的な土地収奪が引き金となっています。(Center for International Forestry Research)

これらの要求事項を満たせば、農園開発許可(Izin Usaha Perkebunan)が県知事から与えられます。農園開発許可を取得した企業には、農園面積の最低20%以上を地域住民が管理主体となるコミュニティ農園として開発することが求められています。これは、地域住民を巻き込むことで地域経済を発展させることを目的としたものですが、分配される土地やアブラヤシの収穫によって得られた利益配分が契約通りでないことをなどが原因で軋轢が生じる事例も報告されています。

最終的に農園開発を開始するためには、国土庁(Badan Pertanahan Nasional:BPN)から事業権(Hak Guna Usaha)を取得する必要があります。これは、開発予定地域での紛争がないことが確認された後に与えられ、最長で35年間(さらに25年の延長が可能)にわたり土地に対する権利を認めるものです。